自己紹介で血液型を言うの?
外国人が日本語学習の場で自己紹介を学ぶ時。
日本語を学ぶ教科書の自己紹介の会話例には、
日本人が「蠍座のAB型です」などと言う例が時々出てくる。
最近の日本語学習者は日本通なので、「日本人のあるある」としてわきまえていて反応しないことも多い。
しかし何年か前までは「なぜ星座? なぜ血液型を言うの?」と学生たちは必ずひっかかって、教師の私に質問することが常だった。
日本では、血液型や星座の情報が自己紹介の場だけでなく、ポップな感じの本の著者紹介などにまで使われていたりする。
しかし欧米では、血液型や星座について言及することはまずない。
だから学生には
「血液型や星座が性格や行動などと結びつけられているので、自分を知ってもらうのに情報として意味があると思われているため、自己紹介で言う人もいるのだ」
と説明すると、
「最先端の技術を持つ日本人がそんな迷信めいたことを!」と、
異文化ショックと畏敬の念が生まれ、日本の神秘的なイメージがますます上がるのだった。

血液型は言わない 星座も場を選んで
血液型性格判断は、日本だけでなくアジアの一部の国でもポピュラーだと聞いたことがある。
しかし欧米では血液型は医学的情報であり、実際、自分の血液型を知らない人もけっこういる。
自己紹介で「血液型を自分を語るのに使う」というのは、実に不思議な現象に映る。
星座の場合は占いが好きな人には通じる。
雑談レベルで出ることはあるかもしれない。
しかしきちんとした自己紹介では使わないし、「占星術」というものの捉え方も人それぞれなので、自分から話をふるには慎重な見極めが必要だ。
また、個人的な感想を言えば、「○○座はこういう人」というような心理傾向への一般の人の知識が、日本人と欧米の人では格段に差がある気がする。日本人のほうが詳しい。
だから、そういうことが好きな人同士の集まりでないと、そもそも情報として使えないということがある。
もちろん海外と言っても欧米の一般論であって、例えばラテンアメリカはだいぶ占星術やスピリチュアルなことに関しての感性が高い。
いずれにせよ、文化の違いを意識した「日本では血液型性格判断があって」といったメタ説明をつけるなどすると、皆が違和感なく会話を楽しく拡げていくことができる。

占いではなく心理タイプ分析
12星座占いや血液型その他、日本で人気がある様々な「占い」は、占いというより性格・心理分析にあたるものが実に多い。
日本人がそこに興味を抱くのは、自分を知るということはもとより、他人を理解したい、自分と違う思考・行動パターンを理解したいからなのではないかと思う。
そしてそれには、心理傾向を言語化して分類し属性として表すというのは非常に便利なツールなのだ。
海外に住んでいると、日本人は「相手、周囲を知る」ということに対する興味がとても高いのではないかと感じる。
良い面に出れば、相手がなぜそういう発言や行動をするのか、他人が何を望んでいるのかを理解して尊重し合える。さすがおもてなしの心の国の人。
悪く出てしまうと、周囲や相手を察して合わせ過ぎて協調過多になってしまったり。
「占いなんて」と思っている人でも、なんとなく面白いと思ってついタイプ分析を読んだりするのは、日本人が、人に興味を持ち、人と生きていくということを常に意識している人たちだからなのではないかと思う。