ホルストの組曲『惑星』と占星術(1) 

7つの惑星の名前が付いた管弦楽曲

イギリスの作曲家ホルストの代表作、組曲『惑星』は、太陽系の惑星の名前をつけた全7曲からなる大編成オーケストラの管弦楽曲。

中でも第4曲「木星」がとりわけ有名で、その昔熱血吹奏楽少女だった私のような者は、もう冒頭を聞いただけで泣くぐらいぐっときます。

「木星」の第4主題は元々英語圏では広く知られていましたが、日本では『ジュピター』という平原綾香さんの歌で一挙に有名になりましたね。力強く温かい彼女の歌が圧巻なのはもちろん、吉元由美さんという作詞家の方の歌詞が素晴らしすぎます。

さて、組曲『惑星』の7曲にはそれぞれ副題がついています。木星は「よろこびをもたらす者」、火星は「戦争をもらたす者」、水星は「翼のある使者」。

これは何のイメージなんでしょうか?

占星術で使われる象徴

これらの副題はホルストが個人的に思いついたイメージではなく、占星術的な惑星の意義に基づいています。

ホルストは1913年、スペインのマジョルカ島でバカンスを過ごしていた時に友人から占星術の話を聞き大変興味を持って、そこからこの曲の着想を得たそうです。ホルストの友人で著作家のクリフォード・バックスによれば、ホルストははかなり上手なホロスコープの読み手にまでなったそうです。

占星術というと未来予言だと思う人もいるかもしれませんが、ちょうどこの時期は、今では現代占星術の父と呼ばれているアラン・レオというイギリス人が、当時廃れていた占星術を独自の解釈で復興させた時期と重なります。

その新しい現代占星術というのは、一言で言えば宇宙と人の照応。宇宙と人は類似した構造を持っていて天体と人は共鳴するという考え。

占星術は予言ではなく人間の心の傾向を示すもの。そして、人間の心は成長し発達していくべきものである、という考えに基づいた自己成長と関係する心理学的なものです。

占星術では惑星はそれぞれ、象徴する性質と人格化されたキャラクターのようなものを持っていると考えられています。

例えば土星が象徴するのは、時間、老成、責任、凝固。あてがわれているキャラクターは老人や賢者、教師。

それが人に照応して影響すると、ストイックに努力する態度として現れたり、(自分に厳しいので)自信のなさとして現れたり、コーチ的リーダー的な人を導く性質として現れたりと、様々な現れ方や解釈の仕方があります。

惑星の性質

じゃあ惑星の性質ってどんなものなんでしょう? 組曲『惑星』を構成する各曲とともに簡単にご紹介します。

第1曲 火星 戦争をもたらす者

緊張感ある不穏な始まり方をするこの曲。アレグロ、5/4拍子。特徴的なリズムが持続して曲全体を支配し力強く戦闘的。映画音楽のように壮大でエピックに思えますが、実際にこの曲が作られた頃は第一次世界大戦開戦の時期でした。

占星術的な意味での火星は、戦闘性や攻撃心を象徴するだけでなく、意欲や情熱、強く前に進む力なども表します。外に自分を打ち出して生きるエネルギーということです。どんな性質も、それ自体がいい悪いではなく、解釈や使い方、意味付けの問題。

ローマ神話の軍神マールス(マルズ)の名前を持つ、勇気と挑戦と生き抜く力の星です。

第2曲 金星 平和をもたらす者

まどろんでしまいそうな穏やかな曲。木管楽器中心で優しく、キラキラと遠くに静かに輝く光のような終わり方は美しく平和そのもの。

占星術では金星は愛と調和の星心地よさや豊かさ、美も象徴します。ローマ神話の愛と美の神ヴィーナスの名がついています。

第3曲 水星 翼のある使者

軽やかで速い音の動きが特徴的な曲。短くてあっという間に終わるところも水星らしいなー、と思います。

実際の水星は公転周期が短くて、地球から見ると速く動いているように見えるし、小さくて小回りの利きそうなフットワークの軽さを感じさせます。 

占星術で水星が象徴するのは知性とコミュニケーション移動(旅)や言語能力も水星の扱うものです。翼の生えたサンダルを履いて神々の間のメッセンジャーの役目を果たす、ローマ神話のメルクリウス(マーキュリー)という神様の名前がついています。

続きはホルストの組曲『惑星』と占星術(2)へ

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