(2025年5月9日の新教皇選出時に書いたものを移動)
明瞭で力強い言葉
プレボスト枢機卿が新教皇レオ14世としてサン・ピエトロ大聖堂のバルコニーから全世界へ向けて発した最初のメッセージ。
テレビの生中継で聞いていて、カトリック教徒ではないけれど感動して涙が出た。
言葉の意味が全部は分からなくても私にはしっかりと響いて、心に届くってこういうことなんだと思った。
この人には本物の情熱と信念がある、と感じさせる何かがあった。
一言一言力強くしっかりはっきり。書いたものを読んでいるのに心がこもっている。
選出されてからの短時間に自ら書いたのだろう。即興ではない。
大事なことだからきちんと伝えたい、しっかり伝わるコミュニケーションがしたい、そんな姿勢が表れている。
この人は対話したい人なんだ。仕草や表情からそう思える。
この難しい時代にふさわしい、コミュニケーションの人だ。
フランシスコ前教皇が選出された時は、彼の人となりをそのまま表すように、自然体で素朴に「こんばんは」と聴衆に話しかけはじめた。
少しはにかんだような、彼の親しみやすさが滲む語りかけだった。
それもとても良かった。
しかし今この混迷の時代、国際秩序の安定に大きな影響力を発揮できる教皇には、対話する力が何より求められる。
とても良い人選のように思える。
レオ14世という名前が持つ意味
メッセージでは「平和」という言葉が何度となく強調しながら繰り返された。
その平和は、抽象的で観念的なものではない。現実世界の平和だ。
現実世界の社会問題に取り組むという決意が、自ら教皇名として選んだ「レオ14世」という名に表れている。
14世というからにはその前に13人レオがいるが、意志を継ぐという意味では一つ前のレオ13世を踏まえてのことだと思われる。
レオ13世は、全カトリック教会に向けて初めて、労働者の権利や社会システムに言及し、社会問題への主体的な取り組みを指示する回勅を出したことで有名。
フランシスコ前教皇と近しい関係にあり継承路線を想像させながらも、歴史上の教皇の中から敢えて「レオ」を選んだのは、社会問題に取り組み、現実社会と結びつき、現実社会に奉仕する、という新教皇の意思表明だと見ることができる。
いくつもの架け橋になり得るバックグラウンド
メッセージでは途中、スペイン語でスペイン語圏への呼びかけがあった。
スペイン語で話し始めた時、感極まったように少し間をとった。
ペルーの人たちへの愛情こもった呼びかけ。
宣教師として長きにわたってペルーで過ごした日々が思い出されたに違いない。
ラテンアメリカで大きな働きをし、ペルー国籍も持つことは非常に大きい意味がある。
しかも父はイタリア・フランス系、母はスペイン系という、ヨーロッパの中でもカトリックの強い国にルーツを持つ。
その上、カトリック大国ではないけれど国際秩序を保つのに大きな鍵を握る米国出身で、米国人に同国人として自分の言葉で影響を与えられるのはものすごいポイントだ。
いくつもの意味で、世界の分断を止める架け橋となれる要素を持つ彼。
残りの人生を教皇として生きていく。
そんな難しい使命を引き受ける決意をするというのはどんなものか想像もできない。
どうか新教皇が、健康で、自分らしく信じる道を行き、難しい使命を存分に果たせますように。